- AO入試 慶應FIT入試の出願資格
- 準備が必要な書類
- 一次試験の合格率
- 2次試験
- FIT入試は勉強しなくても受かる?
- 合格率を上げるには
- FIT入試を終えて
- 総合型選抜 AO入試で学校が求める生徒とは
AO入試 慶應FIT入試の出願資格
今回は、最難関のAO入試といわれる慶應の入試の流れを例にとってみたいと思います。
慶應義塾大学法学部のAO入試は、FIT入試と言われています。
大学が教えたい生徒と、勉強したい学生をFITさせる入試方式です。
出願は法律学科か、政治学科のいずれかでA方式、B方式の2種類があります。
まずは出願資格ですが、
A方式
誰でも出願が可能です。
つまり今お読みいただいている方で、受験を考えている方誰にでもチャンスがあります。
B方式
高校3年間全体の評定平均が4.0以上でかつ、
英数国社の各教科の評定平均値が4.0以上。
そして、B方式は地方在住の方はチャンスです!
全国を7ブロックに分けて、各10名ずつの合格者をだすため、当然ですが首都圏在住のかたが激戦となり、地方区は出願数が圧倒的に少ないため、合格しやすいと思われます。
つまり
B方式の出願資格あればAB両方出願可能
これだけで2回チャンスができるわけです。
準備が必要な書類
慶應のFIT入試では
<AB共通>
・志望者調書 1200字
経歴、知的成長の過程など、これまでの足跡を記入。
・志望理由書 2000字
慶應義塾大学法学部を志望した理由、入学後、何をどのように学び、また自分の夢をどう実現したいかを志望理由と関連させて記入。
上記の2点に加え<A方式>
・自己推薦書 A4用紙10枚以内
活動の実績を示しつつ、いかに魅力的な人物かを自由に記入書類のみ。
(工作物、ビデオ、CDなどは不可)
なお、可能なかぎり実績を証明する書類を添付。
また、高等学校等の成績証明書以外で、学力を客観的に証明する書類
(外国語能力を示す公的機関の証明書のコピーなど)があれば提出。
上記の2店に加え<B方式>
評価書
在学している、もしくは卒業した高等学校等に現在在籍している教員あるいは学校長が、記入・厳封した評価書を提出。
一次試験の合格率
2021年の公式ホームページの発表では上記の通り。
まず、書類を出した段階で1/3~1/6に絞り込まれているのがわかりますね。
そして、成績の評価を求めるB方式の方が志願者が少ない分、合格率が高くなります。
2021年は男子の最終合格者が女子とずいぶん違いますが、例年ここまででの開きはないので、男子の方もそれを理由にあきらめる必要はないと思います。
2次試験
書類が通れば、本番です。
ここからが本人の実力を見られることになります。
A方式
①論述試験
教員が模擬講義(50分間)を行い、
講義後に論述形式の試験(45分間)を行います。
試験では、法律学ないしは政治学の修得に必要な理解力、考察力、表現力などを評価
(両学科とも同時に同一の内容にて実施)
例えば2020年度論述試験では
2020 年度 FIT 入試第2次選考概要(A 方式)
1. 模擬講義の概要
• 講義のテーマ:自由の過去と未来
• 講義の概要:
1. 何が自由に反すると考えられるか……さまざまな設例
2. 二つの自由概念(アイザイア・バーリン)
3. マルクス主義とナチズムの影
4. J.S.ミルにおける自由と幸福(古典的自由主義)
5. ベーシック・インカム
6. 個々人の選択は独立か?
7. 「強い個人」と「弱い個人」
8. 「選択しないという選択」
9. 不幸になる権利?
*大学1年生が受講して理解できるレベルの講義(50 分)を行う。
2. 論述形式試験の概要
• 論述の設問内容
講義の内容を 10 行程度で要約し、それをふまえて自由と統制の関係について考えを述べる。
• 解答の形式:A3レポート用紙形式・字数制限無し。
• 試験時間:45 分
②口頭試問
2021年度は従来受験生同士で行ってもらっていたグループ討論を変更し、複数の教員と1名の受験生で、口頭で与えられたテーマについて質疑応答を行い、受験生の学問的な理解力や知的表現力などを考査(約15分)開始前に自己アピールを兼ねた自己紹介(2分)
※子供が受けたときはグループ討議でした。コロナの影響で変更になっています。
• テーマ(政治学科):
「各国の科学技術力を示すひとつの指標として、科学技術分野の論文数の国際ランキングがあります。2018 年に全米科学財団が発表した報告書では、中国がアメリカを抜いて首位となり、日本は新興国のインドに抜かれて 6 位となりました。こうしたことから、1990 年代にはアメリカに次ぐ位置にあった日本の科学技術力の低下が懸念されています。日本の科学技術力が低下したのには、どのような要因が挙げられるのでしょうか。また、日本の科学技術の競争力を向上させるためには、どのような対策が求められているのでしょうか。自由に議論してください。
• テーマ(法律学科):
「現在、日本は人口減少社会に突入し、持続的経済成長を続けるためにも、男女共同参画と女性の社会進出は不可欠です。これまでに政府はさまざまな取り組みを行い、近年では働き方改革を掲げ、女性の働きやすい環境作りを推進してきた結果、この 30 年間で女性の就業率は上昇しました。しかし男女間での格差が依然として存在するなど、問題も少なくありません。資料 1、2、3、4 を参考にし、こうした女性の社会進出を抑制する現象を生む制度的・社会的・文化的な要因について多角的に議論を行ってください。」内閣府『男女共同参画白書 平成 29 年度版』から 4 つの図表を資料として問題文に添付
B方式
①総合考査
Ⅰ 与えられた資料(グラフ、表、データ、条文、判例など)から読み取れることを400字程度にまとめる。
社会科学に必要な論理的な思考力、考察力を評価。(45分間)
Ⅱ 与えられたテーマのもと400 字程度の小論文を書く。
ここでは創造力、独創性、発想力を考査。(45分間)
例えば2019年の問題では
1. 総合考査Ⅰの概要
• 設問の内容:
「帝国大学令」(明治 19 年)第 1 条、「大学令」(大正 7 年)第 1 条、「学校教育法」(昭和 22年)第 52 条、および「教育基本法」(平成 18 年)第 7 条を示し、個々の条文に書かれた語句や文言を比較し、明治から平成まで、国が目指す「大学の理想像」がどのように変遷してきたかについてまとめることを求めました。
• 解答の形式:A3原稿用紙形式・400字程度。
• 試験時間:45 分
2. 総合考査Ⅱの概要
• 設問の内容:
モーリス・クランストン著、山下重一・中野好之・岡和田常忠訳『政治的対話篇』(みすず書房、1973 年)242~243 頁における、19 世紀イギリスの二人の思想家ジョン・スチュアート・ミルとジェームズ・フィツジェームズ・スティーヴンとの架空の対話を引用し、両者の主張を理解した上で「多様性」および「善」について論じることを求めました。
• 解答の形式:A3原稿用紙形式・400字程度。
• 試験時間:45 分
②面接試験
個人面接(一人あたり10 分間)
FIT入試は勉強しなくても受かる?
慶應の入試では、2次試験においての考査により、社会性や想像力、歴史的社会的な幅広い知識、そしてそれを文章、口頭で表現する能力が問われているのがお判りいただけたのではないでしょうか。
提出書類に関して言えば、他人の力を借りて、自分の実力以上のものを出している生徒さんもいないこともないでしょう。
AO受験生の中では有名な話ですが、実際某塾では、出願書類はほとんどが講師が考え、塾の合格実績を上げているという話を耳にします。
これを利用するために高額な料金を払って利用しているのであればいいのかもしれませんが、自分の実力にはならないですよね。
また結局のところ、2次試験でもともとの能力がなければ、簡単に見破られてしまいます。
勉強はしないで、付け焼き刃の準備だけで「マルクス主義とナチズムの影」や、「ベーシックインカム」「教育基本法」について語っても教授側がみれば、本当に理解しているのか否かはすぐにわかることでしょう。
一般入試のためにも、もともと普段の勉強をおろそかにせず、地歴を勉強していれば、法律学、政治学の素養を問われたときに、問題なく理解し、説明する知識や能力がおのずとついてきているはずです。
今回の概要をみて、これくらいの知識なら既に持っているし、いけそうと思った方は、チャンスを増やすためにも、絶対に受けるべきです。
合格率を上げるには
ご覧いただいた通り、確率の問題で言えば、地方にお住まいの方がB方式でうけるのが一番合格率が高いでしょう。
残念ながら住んでいる地域は変えられませんから評定平均値を4.0以上は狙っておけば、少なくともAB両方の方式に出願できるわけですから、単純に確率を2倍に上げられますね。
A方式ならだれでも受験資格があるという点ですが、B方式に出願している人は、Aにも出願している人がほとんどでしょうから、A方式の出願者の半分以上が、評定平均値は4.0以上はあると考えた方がいいでしょう。
塾で聞いた所、過去に塾で出願してきた生徒さんの中で、最終合格者の3年間の評定平均値は4.5以上の方が多いということでした。
高校生活に勉強しなくても受かるの?
ときかれれば実際の合格者から推察すれば、難しいのではないかと思われます。
FIT入試を終えて
受験したAOの中で、志願書に最も時間がかかったのはこちらのFIT入試でした。
A・Bの併願で受験したのですが、内容の方向性を決めるまでに3か月、決めてからの内容の深堀りと書き直しに、2か月くらいはかかったと思います。
自分がもっている資格や、活動、コンクールの受賞歴とのバランスなども難しく、平日の勉強の合間に、書いては添削に出し、書き直し、また書いては書き直しを何十回も繰り返す日々でした。
勿論、慶應の法学部だけに全力投球するわけにはいきませんので、他の志願書や一般入試のための勉強、学校の定期試験の勉強の時間の取り方に苦戦していました。
早稲田の政治経済学部、慶應の文学部などと比較すると、書く量が全然違います。
A方式の自己推薦書は文章ではなく、写真や絵なども入れて、クリエイティブなものを作らなければなりません。
視覚でも訴える自己アピールの方法も、個人の表現力が試されます。
自分の過去を深く掘り下げ自分とは何か、そして自分が将来求めるものは何かについて真剣に考えないと本当の意味での志願書は仕上がりません。
考えても考えても答えが出なくて落ち込む時期もあって、本当にこれでいいのか、本当にこれがしたいのかということで、迷って苦しむ姿は見ていてつらかったです。
書類の分量の多さも群を抜いていますが、添付資料以外はすべて手書きというのも大変でした。最終的に出願書類と添付資料などもあわせ40枚以上になりました。
書類だけではなく、写真の撮り方まで詳細に決まっている為、写真館に持参して撮ったりと細部にも気を遣わなければなりません。
このように、すべてを仕上げるだけでかなりの根気と労力が必要です。
また、1次試験の後の、論述試験や面接、グループ討議の練習も本当に大変でしたが、それに取り組む姿は、生き生きとして見えました。
でも、それを乗り越えて仕上げたことは、本人の力となって、就活の局面でもこの時の辛さを考えたら、どうってことはないという自信につながったといいます。
総合型選抜 AO入試で学校が求める生徒とは
すべての選考を通して、慶應大学法学部のFIT入試に必要なものをまとめると
慶應法学部のAO入試に関して言うと、上記のように学力的な部分だけではなく、いろんなことに興味を持ち動ける行動力や、コミュニケーション能力をもった、全般的にバランスのとれた生徒を求めていると感じました。
選考方法や内容をみれば、その大学や学部がどういった生徒を求めているかがよくわかります。
同じ慶應でもSFCといわれる環境情報学部や総合政策学部においては、バランスのいい人材ではなく、ほかの人にはない個性や、卓越した能力とリーダーシップが発揮できるような生徒が求められているように感じました。
早稲田に関しては、もともといろいろな入試の選考方法があり、学内で多様性を持たせたいという思惑を感じました。
子供の受けた政治経済学部のグローバル入試に関して言えば、選考方法や課される内容から推察すると、海外での就学経験がある生徒の中でも英語の能力が高く、なおかつ日本語力もあり、成績もいい生徒。そして現在、日本人は地元密着傾向の就活スタイルが顕著になっている中で、今後日本の企業において、海外にも出ていきたいという意欲があり、グローバルに活躍してくれそうな人材を求めていると感じました。
AO入試と一言で言っても、様々な選考方法があり、求めている生徒像が全く違います。
自分に合った大学を見極めるためにも、自分の強みを発揮できる入試方法でチャレンジしてみることで、双方にとっていい結果を生みだせるのではないでしょうか。
少しでも参考になることがあれば幸いです。